書籍・雑誌

天声人語 ペコロスの母

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今日4/29の朝日新聞「天声人語
読み始めて、どこかに記憶があるぞ! と思った。
そうそう、「ペコロスの母に会いに行く」の映画。
富山まで見に行った。
認知症をかかえて、どんなにしんどいことか。それを暖かい気持ちにさせてくれる映画だった。 見てよかったと思ったものだった。

ペコロス つまり、ピンポン玉より小さいたまねぎ
       息子の雄一は禿げている のでアダナ

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【天声人語】 4/29(火)

 みつえさんはあの世とこの世を自在に行ったりきたりする。先立った夫がそこにいるかのように、「なァ、あんたァ」 と話しかける。 かと思えば、生きている息子を幽霊扱いにする。 「あんたァ、近頃ゆーいちの現()るとばい」 と
 岡野雄一さんの漫画 『ペコロスの母に会いに行く』 のひとこまだ。 いまは90歳を超えた母は認知症を患いグループホームにいる。 還暦をすぎた長男が 「『少しずつ忘れていく母』 の日常を、オモシロおかしく淡々と描き溜めている」 作品だ
 前編を彩る長崎弁がやわらかく、やさしい。 介護の苦労は並大抵でがないだろうに、作者はそれをユーモアでくるんで暖かい本に仕上げた。 すでに20万5千部発行され、映画化もされた、去年のマキノ旬報邦画1位になった
 岡野さんは先月、本誌地域面のインタビューで、自身の作品が世に迎えられたことについて 「時代のせいとしか思えません」 と話している。 たしかに認知症はいまや誰にとってもひとごとではない。 しかし、この国の現状はまだまだ時代に追いつけていない。
 91歳の男性が徘徊中に列車にはねられ亡くなり、ダイヤに遅れが出たから、家族は損害賠償せよ、JR東海の請求に対し、名古屋地裁は先週、当時85歳の妻の監督責任を認めた。 一審より減額したものの、厳しい判決には違いない。
 負いきれない責任を負わされるなら閉じ込めるしかない。 そんな窮地に家族や施設は追い込まれかねない。 そうさせない仕組みづくりが急務である。

感動して見て来た映画に絡めて、時事問題。 目を引きました

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雪になる頃ー5

たくちゃんの小説「雪になる頃」、最後の章です。

   雪になる頃 5/5                工 春雄

 冬至の高山は、すべてを氷らせるような冷え込みだった。駅を出てしばらくすると、雪になった。
『がんもどき』は早い時間なので、まだ客はいなかった。
いそいで酒を呑みこんだ。
「静江、会社を辞めてきたよ」 静江は驚いて達也を見た。
「お金を用意してきたよ。義弟に渡してスッキリしようよ」
「そんなこと、突然に・・」
「君と『がんもどき』で働くことにしたよ」
「どういうわけで決めたの」
「義弟には、金を渡さないと決着がつかないだろう。退職金で解決することにしよう」
「お家のほうはどうすの」 「娘も大きくなったので、自分の人生を考えることにしたよ」
「それでいいの」
「君たちと食事をしたとき家族を思い出して決心したよ」
「なんだか、突然の話なので・・・、でも嬉しいわ」
「お酒の料理は、土岐だから、お客さんの喜ぶものを作るよ」
静江は、達也の手をしっかりと握っていた。
「サラリーマンのまま終わりたくないし、君と居酒屋をするのもいいと思ってね」 静江は信じられないと、達也を見た。

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高山の正月は「檜槍(けやり)」歌が、家々から聞こえた。
冷え込みが激しい夕方から雪になった。
達也と静江の店が新しく、オープンした。
達也は、思った。
「人生思ったことをやろう、何とかなるさ」
外はしんしんんと雪が降っていた。

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お楽しみいただけましたでしょうか。感想をいただければ、たくちゃんが喜ぶだろうと思います。

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雪になる頃ー4

彼は同級生です。せっかく書いたのだからと毎年ブログに載せてほしいと頼まれます。私も毎日の記事に苦慮することがりますので、渡りに船。
このぺージから見ていただいた方は、5回シリーズですので、前後をぜひ見てください。

   雪になる頃 4/5                工 春雄

「仙台で覚えた、タンシチューでもつくろうか」
買い物籠を持って静江と食材を買ってくると、家族の気分になった。
6時過ぎに、小夜子がマンションについた。
ビールの後はワインになった。
家族の温かさを思い出した。
土曜日の夕方に義弟が突然現れた。
「何もしないから、高山に戻って来てほしい」
静江は達也の顔を見た。
「君の話し、信じていいのかね」 義弟はうなずいた。

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桜の蕾がピンクになった。
小夜子の学校のこともあり、2人は高山に帰った。
達也は、時々「がんもどき」に様子を見に行っていた。

初冬になっていた。
「達也さん、すぐに来てほしいの」 「突然、どうしたんだい」
「義弟が、金を返すか、一緒になるか、決めるように行って来たの」 「義弟が何を考えているか聞いてみるよ」

開店前の店は、薄暗い。静江は仕込みをしていた。煮込みの匂い、串焼きの飛騨牛、漬物ステーキ、材料を手際よく冷蔵庫にそろえている。静江は手を休めず、店の奥を目で合図をした。
義弟は、奥の間に俯いていたが、達也の気配で顔をあげた。うつろな目が達也をみている。
静江が2血の前にお茶を置いて、カウンターの中に入った。
「君、静江さんの気持ちを聞いたことがあるのか」
「・・・話し合ったことはありません」
「静江さんをどうしようとしているのだ」
「ただ好きなんです。 どうしたらよいのか・・・、ただ焦るのです」
「暴力はいけないよ」
「心の内を伝えることが出来ないので、つい手が出るのです」
「お金や暴力では、人の気持ちを開くことはできないよ」
義弟はうなずいた。
達也は、義弟が正常でないと察した。それでも、義弟には、静江に近寄らないことを約束して名古屋へ帰った。

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雪になる頃ー3

楽しんでいただいていますか。 同級生のたくちゃんの小説です。

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   雪になる頃 3/5                工 春雄

 ロビーで本を読んでいて顔をあげるとママが
「ごめんね」と微笑みながら腰を掛けた。
「なににする」 「そうね、紅茶にしようかしら」
飲み物が来るまで、話が途切れた。
店では和服だったのに、今日は、黒のレザーのタイトな服装だった
「どうしたんだよ」
「達也さん、奥様を亡くして何年」
「あいつが亡くなって、3年か、仙台にいると思い出すことが多くて、転勤願いを会社に出したよ」
「やはりね」
 ホテルの庭に、夜降った薄い雪が、朝の光に反射してまぶしい。
ママの顔から、笑みが消えた。
「義弟のことなのです」
 しばらく沈黙が続いた。達也は、どのように話したらよいのか、言葉を選んでいた。
ママは話しにくそうだったが、決心したように話し始めた。
「義弟が、一緒になるよう言ってるの」
{どういう話なのですか」
「『がんもどき』を開店するのに、足りない分のお金を出してもらったの」
「義弟は、独身なのです」 「初婚かい」 俯いたまま、頷いた。
「ママの気持ちはどうなのだ」
「娘の事もあり、迷っていたので話を延ばしていたのです」
「小夜子ちゃんは、何歳になったんだい」
「17歳。難しいのですこの年頃は」
「小夜子ちゃんに話したのか」
「話はしてないけれど、それとなく感じているようなの」
「小夜子ちゃんは、どう思っているの」
「それが、良くは思っていないようなの」
「近頃、義弟は毎日のように店に来るの、暗い感じなのでお客さんが減っているのよ」 達也は考え込んだ。
「達也さんが、高山に来なければ迷いはなかったのに」
驚いて、静江の顔を見た。瞳がうるんでいる。
「外を歩こうか」
ホテルの後ろには雪が残っている。 白樺の林を抜けると、高山の町が白く光っていた。
「しばらく様子を見ようよ」 静江はうなずいた。

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2月に、名古屋にも珍しく雪が降り、10cmほど道にあった。達也は休みなので、昼近くまで寝ていた。
ドアのチャイムが鳴った。
「誰だろう」 ドアを少し開けてみる。
「私出てきたの」 「とにかく、お入り」
「ありがとう」 「散らかしていて、ごめん」
ソファーに座って、静江は落ち着いた。
「我慢できなくて」 涙が止まらない。
達也は、静江を激しく抱いた。 まだ身体が冷えていた。
「昨晩、義弟が店の前で待っていて、達也さんのことをしつこく聞いてきたけれど、黙っていると、突然、暴力をふるったの」
達也は言葉が出なかった。
「娘にも何かしそうで心配なの」
何から話しをしたらよいのか戸惑った。
「何か食べに行こうか」
錦通りのホテルの地下にある四川料理店にはいった。
「ここの料理は、私の好みでね。麻婆豆腐の辛いのがたまらなくて」 静江は、ほほえんだ。
お店には、しばらく休業の張り紙を出してきたの」
梗菜、酢豚の辛さはいの中まで燃えているようだ。 スープが出されたので、舌の感覚が戻ってきた。
「しばらく僕のマンションんで休むといいよ」
「小夜子にも、来るように言って来たの」

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雪になる頃ー2

昨日に引き続き、たくちゃんの小説です。

    雪になる頃 2/5                工 春雄

 ふと、振り返ると、店にいた男が話しかけてきた。
「ママとは、秋田からの知り合いですか」
「そうだけど、何か」
「私は、亡くなった夫の義弟です。気になることがあり、後をつけてきました」 しばらく、話が途切れたー。
「冷えてきましたので、これで帰ります。失礼します」
達也は、目礼をして帰ってきた。
 訳のわからない、後味の悪さが胸の奥に残された。
 何を考えればいいのか、頭の中は繰り返し結論の出ない話がさまよっている。それを断ち切るように、寝酒を呑んだ。気がついたら朝になっていた。
ー 変な夢を見たのかな? -
外には、雪が積もっていた。

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駅の外には除雪した雪がこんもりと塊になって街灯の下にあった。
得意先に、年末の挨拶に来た。
「部長、今晩行きますか。尾の店でいかがですか」
「そのつもりで、ホテルを取っておきました」
食事の後、取引先の馴染みの店で呑んで、お客と別れた。
暮れの高山の夜は足元から、冷たさがしにびよる。
寒さでよいが醒めそうだ。 『がんもどき』の提灯が見えた。
「相当呑んだようですね」
「あー、飲みすぎたようだ」
「でも、機嫌がよさそう」
「ちょっと、いつもの店で騒ぎすぎたかな?」
「気になる女(ひと)でもいるのでしょう」
「そうじゃないが、お客も喜んでくれたので、調子に乗りすぎたかな」 何気なく、座敷を見ると義弟が手酌で呑んでいる。ママが気付いて顔を近づけ、小声で、
「明日逢っていただけない」 達也は、義弟を見ながらうなずいた。

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雪になる頃ー1

たくちゃんの小説です。昨年度に原稿を貰っていたのですが、遅くなってしまいました。 たくちゃんは、北日本新聞のカルチャースクールの文章教室に通っています。 その教室で書いたものを「くるみ」という小冊子にまとめてあります。
5回に渡り書きたいと思っています。感想については、1回ずつは大変でしょうから、読み終わってから入れていただいて結構です。
挿絵は、たくちゃんです。

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        雪になる頃 1/5                工 春雄

高山駅の改札をでると、ロータリーの先はお土産の店が両側にあり、夕暮迫る初頭の道では、誰もが急ぎ足で通り過ぎていく。
達也は首筋が冷たくなってきたので、コートの襟を立てた。
一刀彫の仏像や鳥の彫刻の店の右の路地に入って、赤い提灯の居酒屋の前で立ち止まった。一息ついてから、紺染めの暖簾をくぐり、格子戸を開けると、暖かい風が達也を包んだ。
「いらっしゃい、寒かったでしょう」 ママの声を聞いてほっとする。
コートを抜きながら、
「秋田には雪が多く降ったが、こんなに冷えなかったね」
出された熱いタオルで、首まで吹くと体が温かくなってきた。
「秋田を出てから何年になったかね」
「夫が亡くなって、しばらくして秋田をでたから5年たったかしら」
出された熱めの地酒が喉を過ぎて胸も温まってきたころ、達也は思い出したようにつぶやいた。
「御主人は高山の出身だったのですね」
ママは小鉢に入れた蕗を置きながらうなずいた。

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達也は東北支店に勤務していた頃、秋田へ出張の折りは、この居酒屋によく通っていた。
「秋田の店では、世話になったね。あんな元気なご主人が亡くなるとは」
「達也さんがこの店に来るとは驚きました」「『がんもどき』、こんな変な名前の店はあまりないので、もしや と思って入ったらママがいて驚いたよ」
ママも懐かしさと嬉しさで、満面の笑みで酒を注いでくれる。しかし、時折視線は、少し遠くに移る。視線の先には、うつむき加減で、手酌で飲んでいる男がいた。
出張の気楽さで話もはずみ、相当の酒が入っていた。
「ママ帰るよ」
「達也さん、大丈夫」
「平気だよ、これくらいの酒で」
ママが戸を開けてくれた。 外に出ると足元がぐらついて、ママにしがみついてしまった。
「ママごめん」
「ホテルまで送りましょうか」
「大丈夫だよ、これくらいで」
冷たい風に当たりたくなり、細い路地を曲がり、陣屋の前にでた。
赤い橋の欄干から川を見ると、鯉が数匹、流れに逆らって泳いでいるのが街灯の明かりにぼんやりと見えた。
 - 流されずに、死ぬまで泳いでいるのだろうか。 自分も働き続けて一生終わるのだろうか -

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随筆「カモネギ」

課題作品 「食べる」

      カモネギ          工 春雄

 私の生家は、玄関を入ると土間になっていて、板敷をわたると、茶の間になっていた。
 茶の間は食事をするところで、近所の人が来てお茶を飲みながら話をする部屋でもあった。
 茶の間には、囲炉裏があり、火を消さないように気を配り、父は煙草の火種にしていた。
また、食事の煮物もこの囲炉裏であった。

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 戦争が終わった雪の深い冬だった。
 村の猟師が「鴨」を持ってきてくれ、肉と骨に分けてさばいてくれた。
 母は肉片のついた骨と石と金槌を私の前に置いて、細かく砕いて団子にするように指示した。
 金槌で自分の手を打って痛いのでやりたくなかったが、母には逆らえず、黙々とやった。
 薪からでる煙でめがしょぼしょぼする。
 囲炉裏に鴨鍋が吊るされており、牛蒡、ねぎの中に肉と骨団子がぶくぶく音を立てている。
 祖母、父母、兄弟8人箸が、肉の取り合いになる。骨団子は残る。
 骨団子は口の中に入ると、骨片が残り、食べにくい。だけど、味がしみ込んでおりいつまでも味が口の中に残った。
 私の作った骨団子が、こんな味になるとは思わなかった。今でも舌のどこかに残っている。

 父は、囲炉裏で、家族が食事しているのを見ながら酒を飲んでいた。赤い顔しながら、私をからかっては笑っていた。
 鴨料理をたべると、この光景が思い出され、温かいのは料理だけではなく心も和やかになる。

 鴨がネギをしょってくる、と言う「カモネギ」の話を知ったのは、マージャンの仲間からだった。
 「カモとネギ」の美味しい関係を納得することができた。

      ー・・-・・-・・-・・-・・-・・-・・-・・-・・-

いつも読んでいて下る人は分かると思いますが、工 春雄さんは、同級生です。せっかく書いたのだから、多くの人に読んでほしいから、発表の場に使わせてほしいとの事。

以前、彼と「鴨鍋」の話で盛り上がったことがある。
「美味しい鴨鍋食べたいね。団子の入ったの。お姉さんが作ってくれた鍋、忘れられなくて、場所を変えて何度も食べたけれど、肉だけ入っているので、味が全然違う」
「あなたもあの味知っているの。一人でも知っている人がいて、うれしい」

お姉さんさんとは、夫の・・です。その後、何度も「お姉さん・・・」と甘えてみても、「だって、大変だもの」と取り合ってくれない。もっとも、今では、鴨なんて手に入らない。 手に入ったとしても、冷凍でしょうし・・・。

もう一度でいいから、骨団子の入った「鴨鍋」食べたい。

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タウン誌に米ちゃんが・・・

昨日、清姫さんから「タウン誌「まんまる」に米ちゃんが、1ページ丸々出ているよ」と連絡があった。これは、北日本新聞に毎月、広告と一緒に入ってくる物です。

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道具拝見」の見出しで、「能面」についての記事だった。写真にあるのは「井筒」で使われた物。鼻の所にシミみたいなものがあるが、“作った後から松脂が出てきたが、あまりにいい出来映えだったのでそのまま使用した”との由来によるもの。もちろんこれは、模写したものですが・・

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字が小さいので、判りづらいから・・・-・・・-・・・-・・・

まっすぐこちらを見る目、少し開いた口が、何かを語りかけてくるようで、目を離せなくほどの迫力を感じる。米島さんが今年8月、「井筒」で演じた若い女性の面だ。「面を付けるときには『演じさてもらいます』と頭を下げる。まさに面に乗り移るような気持ちにならないと、演じられない」と米島さんは語る。

能との出会いは、20歳の時、知人に誘われ、謡の教室に通い始めた。独特の有限の世界に引き込まれ、38歳で謡の教授嘱託の免状をもらうと、大鼓、能管、舞の稽古も始めた。現在は高岡市の宝生流職分、山崎健さんの教室に週1回、重要無形文化財保持者の大坪喜美雄さん(横浜市)の出稽古に年8回通う。

井筒」は、山崎健さんが主宰する蒼山会の発表会での演目。この日のために1年間練習を重ねてきた。

面は無表情。顔の微妙な向きで、すべての感情を表現する。一方面を付けると視界は極端に狭まる。つい足元を見たくなるが、そうすると演技がおかしくなってしまうため、舞台に立つ4本の柱を頼りに動く。「最初は怖いが、見えにくいからこそ、集中力が一層高まる」と言う。

米島さんは「私たち素人にとって、能の稽古は覚えることがたくさんあり、体力的にもつらい。しかし舞台が終われば、また新たな演目に挑戦したくなる」と魅力を語る。次の発表会は数年後。「会員の高齢が進む中、若い人にも見てもらいあたい」と、仕事を終え、自宅の稽古場にこもる生活が続いている。

     ・・・-・・・-・・・-・・・-・・・-・・・-・・・ー・・・

米ちゃんの能や面(井筒だけではない)について、何度か記事に書いたことがあるが、下記の URL は、8月に行われた「井筒」について書いた物です。よかったら、クリックしてみてください。

http://youkohime-1.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-a6ec.html

 米島さんは、今週初め、教授嘱託から、師範になられました。  おめでとうございます。

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小説「川の流れ」 -3

     川の流れ ー3ー        工 春雄

蒸し暑く、いつもの倍くらい汗がでた。 太陽は山陰に落ちるように茜色を残して消えると、川から涼しい風がリバーの窓からはいってきた。 暮れかけた川岸の草むらから、蛍の淡い明かりがあちこちに見えていた。 川面を見ていたホセの眼が潤んでいる。ブラジルの家族を想っているいるようだ。

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「パパ、ママ元気かな」 「マリアはどうしているだろう」 ホセが呟いている。 良子は、ハッとした。次ぎに咲江の事を想った。 ホセの思い出しているマリアは、恋人だろうか。

川面に白波が見えて、風が冷たくなっていた。 救急車が工場に入っていく。 火花がホセの仕事着について気が付かず、大やけどをしてしまった。 咲江は通学の帰りに、毎日のようにホセの病院に寄っていた。 良子は咲江の行動を知らないふりをして見守っていた。

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休日に咲江は花束を持って、病院へ行くと、カーテンの中から明るい笑い声がして、ポルトガル語のテンポの速い女性の声が漏れてきた。 ブラウンの長い髪に澄んだ黒い瞳、しなやかな体の娘が、ホセを見つめていた。 「咲江、婚約しているマリアだよ」と、にっこり笑って紹介した。 咲江は、花をホセに投げつけて、帰りたかったが、こわばった顔でやっと挨拶をした。

ホセは話を始めた。 マリアの家はホセの向かいにあった。 二歳年下で、男の子にいつもいじめられていた。 いじめられると、泣きながらホセの後ろにしがみついて、離れなかった。

ホセは足が速く、サッカー選手をめざしていた。 ハイスクールで、試合中に足を骨折し、サッカーへの夢をあきらめざるを得なかった。 夢を断たれたホセは、学校も退学してしまった。 それからは、あちこちで仕事をするが、長続きせず酒におぼれていった。

マリアはただ見ているだけでどうすることもできず、朝夕神に祈り続けた。 眠れぬ日が続いた。 夜明けに、熱帯の激しい雨で起こされて、ベットから外を見ると、黒雲が切れて朝日が射し込んできた。 「ホセを連れて、教会へ行こう」 昨夜の宵が残っているホセを連れて、教会の扉を開けた。 ステンドグラスから差し込んでくる光がホセとマリアの祈っている手を照らしていた。

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マリアの弟ミラエルが日本に働きにゆくことになり、ホセの日本に来た。

咲江は、何を話し、どう帰ったかわからなかった。 家にはいると、良子に抱きついて泣いた。 良子は解っていた。そっと咲江の髪をなでてやるだけだった。

みぞれが雪になり、川面に落ちている。 ホセはマリアとブラジルに帰るので挨拶に来た。 帰ったらすぐに結婚するとの話だった。

「行ってきますー」 咲江の明るい声がする。 今年は大学の受験だ。 良子の生まれた「東京の大学」に行くことになっている。

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駱駝のコブのような山(二上山)の絵は、玉井晶夫氏。        写真は、私が撮った物です。

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小説「川の流れ」 -2

     川の流れ ー2ー        工 春雄

「寿の湯」には酒、ビールも飲める軽食堂「リバー」があった。 二人は風呂上がりに食事をするようになっていた。 良子は夜になると番台を舅と代わり、リバーを切り盛りしていた。

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良子は東京の下町の生まれで、学生時代に知り合って結婚した。 しばらく東京で生活をしていたが、夫が家を継ぐことになり家業の鉱泉の手伝っていた。

この村に来た頃は、方言で意味が解らず、突然よその国にきたような錯覚に陥った。 この頃のことを思い出すとブラジルの若者達は、よそもの同士と思われて、親しみがあった。 良子の長男はアメリカに転勤になり、日本に帰ってくると、良子に外国での仕事の厳しさを話していた。 長男がだか異国で苦労していることを思うと、他人事と思えなくなっていた。

若者達はようやく話せるようになった日本語は、越中弁を交えていた。 二人は怪我が多く病院に行くときはどうしたらよいか困っていた。 そんなとき、良子は親身に若者達の相談相手になり、いつのまにか「ママ」と呼ばれるようになっていた。

娘の咲江は高校生で、店の手伝いを始めた。 ホセとミラエルは咲江をつれてライブやハイキングによく行くようになった。

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ホセを意識し始めた咲江の様子を良子は気付いていた。 若いときの男と女の気持ちは夫とつき合っていたころの自分たちの行動を考えると、恐ろしくなった。 相手はブラジルの男だ。それでいいのか。同じことを頭の中で繰り返し、悩んでいた。

良子は咲江の胸の中に秘められた心を思うと、ホセの気持ちを知りたくなっていた。

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